何度も嘔吐するウィシュマさん「死ぬ。救急車…」 看守「辛いのは分かったけど死なないで。私権力ないから。痛いこと以外考えようか」

「朝まで我慢して」床に残し立ち去った看守　ウィシュマさん生前映像
2023年3月3日 18時39分

　名古屋出入国在留管理局で亡くなったスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさん（当時33）を巡る国賠訴訟で、生前の姿を収めた監視カメラ映像が名古屋地裁の法廷で上映されることが決まった。遺族が「死の真相が隠されている」として公開を求めたが、国は非公開で取り調べるべきだと反対した証拠だ。記者が訴訟記録の閲覧手続きを経て視聴した映像からは、国の調査報告書には記されていない事実が少なからず確認できた。（高橋俊成）

　国によると、映像はウィシュマさんが亡くなる2021年3月6日までの約295時間分が残されていた。このうち、証拠提出されたのは約5時間分（DVD20枚）。収容された個室の天井から見下ろす角度で主にベッドに横たわるウィシュマさんが映されていた。

　21年8月に公表された国の報告書は、この映像などをもとにウィシュマさんの死を巡る入管対応の問題点などを指摘していた。

看守「辛いのは分かったけど、死なないでね」

　同年2月22日は報告書が「ベッドから上体を起こすのに介助を求めることが多くなった」と言及した時期だ。映像からは、水分を取ることすらままならない状態だったことが見て取れた。ウィシュマさんは「飲むの難しい。全部外行く」と苦しそうに訴える。看護師は「飲まないと、あかんで」と返すが、水分を差し出すような行動は取らない。

　「全部外行く」の意味は23日夜の映像をみてわかった。手にした袋に何度も嘔吐（おうと）し、「担当さん」とインターホンで看守を呼ぶ。看守が現れるまでの約4分間、断続的に吐いた。

　ウィシュマさんが「死ぬ。早く救急車呼んで」と絞り出すと、看守は「死なないで。大丈夫だよ。辛いのは分かったけど、死なないでね」と返す。「アネー、病院持っていって。お願いします、お願い…」と繰り返したが、看守は「私、権力無いから。痛いこと以外のこと考えようか」と取り合わない。

　遺族側によれば、ウィシュマさんが何度も発した「アネー」は命乞いのような哀願をする時のシンハラ語だ。それまで日本語で助けを求めていたが、確認できた限り初めて母国語を発していた。22～23日のこれらの様子は報告書からはほぼ読み取れない。

※略※

https://www.asahi.com/articles/ASR334CYTR2SOIPE003.html