- 1 : 2022/06/01(水) 17:54:25.22 ID:e6+GXvp30
-
その男は強欲だった。
彡(゚)(゚)「はあー、ワイのコレクションもなかなかのもんやな」
彡(゚)(゚)「本棚にはありとあらゆるラノベが並び、ショーケースにはフィギュアがいっぱいや」
彡(-)(-)「でもすこし隙間があるな。埋めたいなあ」
彡(゚)(゚)「……」
彡(^)(^)「せや、また盗ってきたろ!」
- 2 : 2022/06/01(水) 17:54:59.10 ID:e6+GXvp30
-
男は、欲しいものがあれば、それがある所へ押し入り盗ってくる。
そのコレクションを充実させるにあたり、金を払ったことなど一度もなかった。だが、男の仕事は決して盗人というわけでもない。
男にとって、盗むという行為はコレクター欲を満たすための手段に過ぎなかった。では、男の仕事とは何であったのか。
- 3 : 2022/06/01(水) 17:55:12.84 ID:AaGS6Ny90
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万引きおじさん登場
- 4 : 2022/06/01(水) 17:55:31.09 ID:e6+GXvp30
-
彡(゚)(゚)「仕事だっる。しかし、ワイも立派な社会人。ダルクても仕事は仕事」
彡(^)(^)「さあ、今日も墓の点検をはじめるか!」
男は、とある墓園の管理を行政から任されていた。
墓園をきれいに保ち、新しい入居者があれば快く迎え入れる。
それが、男の仕事であった。しかし、墓園の管理というのは実に退屈なもので。
掃除なんてものは、一時間もあれば終わってしまい
残った時間は小さい管理室で暇を持て余すのみだ。 - 5 : 2022/06/01(水) 17:55:42.74 ID:OTo+MWIF0
-
頭に「ど」のつく商売やろ
- 6 : 2022/06/01(水) 17:56:00.31 ID:e6+GXvp30
-
いつしか、男は持て余した時間を埋めるように自ら新しい仕事を求めて
さまよいあるくようになっていた。彡(^)(^)「おっ! こんなところに、新しいお客さん発見!」
無縁仏の受入れ営業は、男が思いついた仕事の中でも特に有意義なものであった。
広大な墓園には、まだまだ使われていない墓がたくさんあったため
男はそれを積極的に売り出すことにしたのだ。 - 7 : 2022/06/01(水) 17:56:33.94 ID:e6+GXvp30
-
大抵の亡骸は、親族によって所以ある墓へと埋葬される。
だから男は、営業のターゲットを家族のいない孤独な者たちへと絞ることにした。その目論見は見事的中し、男は膨大な数の客を獲得することとなった。
だが、そうして得た多くの無縁仏をもってしても
その広大な墓園を埋めるには一生をかけねばならないでだろう。この無縁仏営業は、男の本来の仕事とは大きくかけ離れたものであったが
誰も男をとがめるようなことはなかった。 - 8 : 2022/06/01(水) 17:57:02.01 ID:e6+GXvp30
-
♦
その男は、貪食の限りを尽くした。
彡(゚)(゚)「腹減ったなあ。深夜2時か」
彡(゚)(゚)「……」
彡(^)(^)「大盛りUFO食べたろ!」
- 9 : 2022/06/01(水) 17:57:54.91 ID:e6+GXvp30
-
男は、いつからか自身の食欲にひたすらに従順となった。
いつ何時であろうと、腹が減ったら食べる。
深夜であろうが早朝であろうが、分け隔てなく食欲を解き放つ。
それが男の日常であった。彡(゚)(゚)「UFOだけじゃ、なんか味気ないなあ」
彡(^)(^)「せや、あんこかけたろ!」
- 10 : 2022/06/01(水) 17:58:43.05 ID:e6+GXvp30
-
男は、特にあんこをこよなく愛していた。
その力強く頭を穿つような甘さを、舌に馴染む柔らかさ、黒く艶やかな色彩。
その全てを慈しみ、信奉し日毎食した。彡(。)(;)「さ、さすがに焼きそばにはあんこはあわんかったな……」
男の食事は、冷凍食品や缶詰といったできあいの物ばかりで栄養バランスに偏りがあった。
当然、男の体の内は健康とは言えない状況で
時折襲い来る苦痛に地面をのたうち回ることもしばしばだ。
しかし、それでも男は貪食を止めなかった。 - 11 : 2022/06/01(水) 17:59:00.01 ID:e6+GXvp30
-
彡(-)(-)「なむあみだぶつ、なむあみだぶつ」
ある朝、男は墓園の中にある自身の家の墓に向かった。
墓石には、祖父母と両親、それと若くして亡くなった兄の名が刻まれている。彡(゚)(゚)「ワイもいつかは、この墓に入るんやろうなあ」
彡(゚)(゚)「決して仲のいい家族とは言えんかったが、それでも昔は楽しかった」
彡(;)(;)「また、みんなで食卓を囲みたいもんや」
- 12 : 2022/06/01(水) 17:59:07.71 ID:4fhBOWcG0
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お人形遊び
- 13 : 2022/06/01(水) 17:59:25.27 ID:e6+GXvp30
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祖母のサバずしは絶品だった、母の作るカレーは謎の苦みを有していた。
父が連れて行ってくれた、こってりが売りのラーメン屋。祖父が買ってくれたソフトクリーム。
兄と奪い合った、自生のアケビの種。思い出すだけで、男の腹はぐううと音をあげる。
だが、どれも現代においては手に入らない物ばかりだ。
だから男は、思い出の料理に思いを馳せ
せめてもの慰みに今日もお気に入りのあんこに手を付けるのだった。 - 14 : 2022/06/01(水) 18:00:16.87 ID:e6+GXvp30
-
♦
その男は、怠惰であった。
彡(゚)(゚)「……仕事だるいなあ」
彡(゚)(゚)「……」
彡(^)(^)「そうや! さぼったろ!」
- 15 : 2022/06/01(水) 18:01:04.33 ID:e6+GXvp30
-
男は、職場に電話の一本も入れることなく布団に籠り続けた。
それに飽きたら、今度はテレビゲームに取り組んだ。
そして、それすらも飽きたらレンタルビデオ屋に走り、名作映画を片っ端から借りてきた。その時すでに、男のサボタージュは三日に及んでいた。
彡(゚)(゚)「この映画おもろいなあ」
男の目に留まった映画は、アメリカのロードムービーだった。
髭を生やした壮年のライダーが、荒野を延々と走る映画だった。
髪をなびかせ、全身に風を感じるその気持ちよさそうな姿に、男は自身を重ねた。 - 16 : 2022/06/01(水) 18:01:25.29 ID:qL9OnrfQM
-
あーなるほど
- 17 : 2022/06/01(水) 18:01:29.51 ID:e6+GXvp30
-
彡(゚)(゚)「久しぶりに、エンジンに火を灯すか」
彡(゚)(^)「ライトマイファイアや!」
そこからの男は俊敏であった。
車庫で埃を被っていた愛車、あずき色のセロー225を引っ張り出し
その美しい姿にニヤリと厭らしい笑みをこぼした。だが、長らく走らせていないバイクだ。
当然のように、いくらセルを回そうともエンジンはかからない。 - 18 : 2022/06/01(水) 18:02:05.64 ID:e6+GXvp30
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彡()()「くそ! 片っ端から部品を変えたろ!」
彡(-)(-)「どっか、ちかくにバイクやあったかな」
男は、バイク屋へと押し入り使えそうなパーツを片っ端から盗ってきた。
そして時間をかけて、一つ一つの部品を丁寧に交換し再びセルを回す。深夜の住宅街に、ギュンギュンとセルモーターの金切り声が轟く。
ギュンギュンギュンギュンギュンギュンギュン……ドルンドルンドルンドドドドドド。
息を吹き返した愛車に、男は狂喜乱舞し
まるでステップを刻むかのようにリズミカルにアクセルをひねり続けた。 - 19 : 2022/06/01(水) 18:02:31.24 ID:e6+GXvp30
-
彡(゚)(゚)「さて、ワイの愛車も復活したことやし……」
彡(゚)(^)「ライダーの聖地、北海道にいったろ!」
彡(^)(^)「広大な大地を、ワイの愛車で踏破するんや!」
その2日後、男は北海道にいた。
しかし、美しい景色に心振るわせるのも初めのうちだけで
男はしばらくするとバイクを走らせることにすら飽いてしまったのだ - 20 : 2022/06/01(水) 18:02:54.36 ID:e6+GXvp30
-
更に2日後には、男は自宅へと戻り
更にその翌日には何事もなかったかのように職場へと向かうのであった。そうした、男の衝動的なサボタージュは、半年に数回程度の割合でその後も続いた。
- 21 : 2022/06/01(水) 18:03:36.57 ID:e6+GXvp30
-
♦
その男は、色欲に溺れた。
彡(゚)(゚)「なんや盛大にオ●ニーしたいなあ」
彡(゚)(゚)「仕事帰りに、ビデオ屋に寄って変えるか」
男の通うDVDレンタルショップは、品ぞろえの悪い店であった
それでも男はそこを気に入っていた - 22 : 2022/06/01(水) 18:03:44.51 ID:3EmES2USM
-
ええな
- 23 : 2022/06/01(水) 18:04:02.18 ID:e6+GXvp30
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男の住むアパートから近かったということもあるが
その店は、男にとって思い出の店でもあったことが大きい。男が子供のころから、その店はあった。
店の一角にはストⅡの筐体が置かれ、子供の時分足しげく通ったものだった。いつしか、店の内装も明るくきれいな物へと変えられ、ゲームコーナーも撤去された。
しかし、変わったといっても元の建屋をそのまま利用しているため
ふと気づくと以前のかび臭い佇まいが思い起こされるのだ。 - 24 : 2022/06/01(水) 18:04:28.65 ID:e6+GXvp30
-
棚の配置が変えられたとしても、店の入り口、北側にあるトイレ
フロアの中央に立つ明らかに邪魔な柱、その柱が死角となることを防ぐための防犯カメラ
そしていつの時代も店の最奥に設えられたアダルトコーナー。何が起ころうと、何十年経とうと変わらないその店の持つ安心感が、男を優しく包み込むのだ。
彡(゚)(^)「さあて、今日はどのエッチヴィデオにしようかな」
彡(-)(-)「怪奇!廃墟に現る幽霊痴女……これは見た事あるな」
- 25 : 2022/06/01(水) 18:04:45.04 ID:e6+GXvp30
-
彡(-)(-)「汗と汁交わる官能2時間スペシャル……これも見た」
彡(゚)(゚)「……これも見た、あれも見たことある」
彡(゚)(゚)「……あれ、もしかして」
彡()()「この店にあるAV……ワイはもう全部見てしまったのか?」
彡(●)(●) 「うわあああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
彡(。)(;)「どうじて! どうじてえええええええええ!!」
- 26 : 2022/06/01(水) 18:04:48.67 ID:0xzKyQZ20
-
おもろいやん
- 27 : 2022/06/01(水) 18:05:21.65 ID:e6+GXvp30
-
男は、人目をはばからずにアダルトコーナーで声をあげて泣いた。
本物の女を抱くことなど到底できない、それ故にAVだけが男の性欲を慰めてくれるものだったそのAVまで俺を裏切って逝ってしまうのかと。
他の店にAVを探しに行けばいいだけの話だが、悲しみに暮れる男に
そんな通常な思考ができる冷静さは残っていなかった。男の性欲は、AVの枯渇をきっかけに完全に決壊し、その全てが開け放たれたのだ。
- 28 : 2022/06/01(水) 18:05:59.02 ID:e6+GXvp30
-
彡(。)(;)「俺だって本当は、AVなんかじゃなくて本物の女を抱きたいんや!!」
男の心からの叫びに応えてくれる女性など居はしなかった。
それどころか、この世界には、はた迷惑にも泣きわめき続ける男に寄り添おうという者は
老若男女を問わず誰一人としていない。なぜなら、この世界は、その一人の男を残して全て滅んでしまっていたのだから。
- 29 : 2022/06/01(水) 18:06:33.38 ID:e6+GXvp30
-
♦
その男は、嫉妬深かった。
世界を滅ぼしたのは、一種の病原菌であった。
最初の感染者は、南米の聞いたこともない国で見つかった。その病原菌は、長い潜伏期間を持ち、その間宿主に何の苦しみも症状も与えない。
しかし、潜伏期間を過ぎ発症すると、感染者が眠っている間に
全身の血管を収縮させ、安らかな死を迎えさせるのだ。 - 30 : 2022/06/01(水) 18:06:36.50 ID:3EmES2USM
-
すき
- 31 : 2022/06/01(水) 18:06:38.49 ID:VmqphOBR0
-
PS5も盗みそう
- 32 : 2022/06/01(水) 18:07:12.28 ID:e6+GXvp30
-
発見された死者の姿は、一様にまるでただ眠っているだけのように見えたため
その病気は「眠り病」と呼ばれた。J( 'ー`)し「やだわあ、心配ねえ」
彡(゚)(゚)「マスコミが大袈裟にさわいどるだけやろ」
J( 'ー`)し「あら、そうなのかしら?」
彡(^)(^)「コロナだって乗り切ったんや。大丈夫やで」
- 33 : 2022/06/01(水) 18:07:48.92 ID:e6+GXvp30
-
男の言葉とは裏腹に、病原菌は猛威を振るった。
世界保健機構や、各国の最先端医療研究チームがタッグを組み
全力でワクチンの作成に取り組んだが、時すでに遅く。既に全人類が、その病原菌に感染していることが判明した。
日に日に、仲間の研究者の数を減らしていく中で、研究者たちも遂には匙を投げた。 - 34 : 2022/06/01(水) 18:08:19.35 ID:e6+GXvp30
-
やがて、人々も研究者と同様に無駄なあがきをやめ
残された時間をより質の高いものにしようと考えるようになった。そうして、世界に人類史上初めて一切の争いのない穏やかな時間が流れることとなった。
彡(゚)(^)「マッマ、わい就職先見つかったわ」
J( 'ー`)し「あらあら、ついにごくつぶしを卒業するのね」
彡(゚)(゚)「ひどい言いようやな」
- 35 : 2022/06/01(水) 18:08:45.05 ID:e6+GXvp30
-
J( 'ー`)し「それで、どこのタコ部屋?」
彡(゚)(゚)「ちゃうわ! ちゃんとした公務員やで!」
J( 'ー`)し「あらまあ」
彡(^)(^)「国が管理する墓園の管理人や!」
辛うじて機能していた各国政府は、ワクチン研究に託された膨大な予算を引き上げ
それらを広大な墓園の造成にまわし始めた。 - 37 : 2022/06/01(水) 18:09:19.75 ID:e6+GXvp30
-
亡くなった感染者を放置することで、新たな病気が蔓延することを防ぐためだ。
どうせ死ぬのなら、苦痛なく逝ける「眠り病」で。
いつしか、人々は「眠り病」を救いとして受け入れるようになっていた。男の職場も、そうやって作られた墓園の一つであった。
(´・ω・`)「……お兄ちゃん。お兄ちゃんとの罵り合いもなかなか楽しかったよ」
彡(゚)(゚)「おやすみ原ちゃん」
隣人が死に
- 38 : 2022/06/01(水) 18:09:49.94 ID:e6+GXvp30
-
(o'ω'n)「……おん」
彡(゚)(゚)「おやすみおんちゃん」
友と別れ
J( 'ー`)し「やきう、元気でね」
彡(。)(;)「おやすみ、マッマ……」
家族をみとっていく中で
男は、先に逝くことができた全ての人々をひどく羨むようになっていた。 - 39 : 2022/06/01(水) 18:10:16.02 ID:e6+GXvp30
-
大事な人たちを失う度に襲い来る悲しみが、そうさせた。
彡(。)(;)「どうして、ワイはまだ生きているんや」
彡(。)(;)「どうして『眠りの救い』は、ワイの下にやって来ないんや」
後に残されるほど、男は仲間を失う悲しみに暮れ
それに呼応するかのように先に救われた死者達をひどく妬ましく思うのだった。 - 40 : 2022/06/01(水) 18:10:50.86 ID:e6+GXvp30
-
♦
その男は、怒りに燃えていた。
世界は、その男一人を残して滅んでしまった。
どういうわけだか、その男にだけ「眠り病」の救いは訪れなかったのだ。幸いなことに、ソーラーパーネルによって半永久的に稼働し続ける
政府の冷凍庫にはありとあらゆる物資が、今なお大量に残っていた。 - 41 : 2022/06/01(水) 18:11:13.44 ID:e6+GXvp30
-
せっかく備蓄された物資を使い切る前に、人類は滅んでしまったのだ。
そのおかげで、男が一人孤独に生きていくうえで困ることはなかった。彡(●)(●) 「くそっ! くそっ! くそがああああああああああ!!」
男は、自分にだけ救いを与えてくれなかった病原菌に強い憤りを感じていた。
彡(●)(●) 「こんなイラつくときは原ちゃんでも殴りに……いや、もう原ちゃんおらんのやった」
- 42 : 2022/06/01(水) 18:11:38.45 ID:3EmES2USM
-
ここで繋がるんか
- 43 : 2022/06/01(水) 18:11:48.15 ID:e6+GXvp30
-
彡(゚)(゚)「しゃあないから、道路標識でも殴ったろ」
彡(゚)(゚)
彡 と `从;≡( 標識 );, '
( 二⌒) ∵; ≡とと ノ ; ,∴
/ / ̄  ̄ ,W:≡と_ノ~
(__) ドカッ!! (/ - 44 : 2022/06/01(水) 18:12:19.12 ID:e6+GXvp30
-
彡()()「ぎゃああああああ、足があああああああああ」
彡(。)(;)「足が腫れてもうた。もう物にあたるのはやめよ」
彡(゚)(゚)「でも、何でうっぷんを晴らせばええんや」
彡(-)(-)「……」
彡(^)(^)「せや、カラオケでもいったろ!」
- 45 : 2022/06/01(水) 18:12:23.24 ID:PKKB9PCbr
-
穴実か?
- 46 : 2022/06/01(水) 18:12:54.53 ID:e6+GXvp30
-
かつて世界が繁栄を極めていた時代、男はたまったストレスを
カラオケで発散するのが好きだった。誰に気兼ねもなく、のどを痛めることを恐れず
ビールとから揚げとポテトを片手に、懐かしのアニメソングや
最新のロックンロールをあらんかぎりの声で歌いあげるのだ - 47 : 2022/06/01(水) 18:13:52.33 ID:LnyN4dx3r
-
ほしゆ
- 48 : 2022/06/01(水) 18:13:57.95 ID:e6+GXvp30
-
世界が滅びようと、ビールも、から揚げもポテトだって手に入る。
ならば、カラオケボックスに向かうしかないではないか。彡(゚)(゚)「だめか、電気はきとるのに何でか機械が動かん」
残念なことに、男の目論見は大きく外れてしまった。
カラオケボックスに設置されていた通信カラオケは
たとえ発電機から電気を回しても正常に稼働させることができなかったのだ。 - 49 : 2022/06/01(水) 18:14:21.92 ID:e6+GXvp30
-
彡(゚)(゚)「説明書も斜め読みしてみたけど、ようわからん!」
しかし、男は諦めなかった。
彡(゚)(^)「通信カラオケがダメなら、LDカラオケや!」
男の父は、とにかく新しいものが好きだった。
まだパソコンが一般家庭に普及していないころに
何の用途も考えずパソコンを買って母に怒られたり - 50 : 2022/06/01(水) 18:14:47.46 ID:e6+GXvp30
-
ベータや3DOといったメーカー戦争の敗北者たちも軒並み家の棚に揃えられていた。
LDカラオケデッキも、そんな父の最新機器収集癖の遺産のひとつであった。近所の迷惑になると、当時はあまり使わなかったものだが
世界が滅びた今、誰に気兼ねすることない。
問題があるとすれば、実家に置いてあるLDの収録曲は
父の趣味の演歌ばかりであったということぐらいだった。 - 51 : 2022/06/01(水) 18:15:08.37 ID:e6+GXvp30
-
彡(-)(-)「つがるううううかいきょおおうううううう、ふゆげええええしきいいいいいい!!!」
男の歌声には、あらんかぎりの怒りが籠められた。
だが、その強い怒りが妙に演歌とマッチした。
もし人類が滅亡していなければ、男はその演歌で天下をとれていたかもしれないほどだ。だが、この世界にはもう鐘をならしてくれる公共放送も沸き上がる観衆もいない。
男のたった一人の演歌フェスは、男の喉がつぶれるまで続けられた。
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