日本政府が設立1年のベンチャー企業に3300億円拠出

危うい「日の丸半導体」復活　政府がベンチャーに3300億円拠出

　9月1日、北海道は朝から強い雨に見舞われたが、新千歳空港に近い工業団地の一角だけは異様な熱気に包まれていた。雨よけのテント内で開かれていたのは、半導体製造を手がける新興会社「ラピダス」にとって第1号となる工場の起工式だ。

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　起工式には東京から西村康稔経済産業相が駆けつけ、国内外の有名企業の首脳らも出席した。起工式後の式典には、岸田文雄首相がビデオメッセージを寄せ「ラピダスの挑戦は我が国の半導体戦略の中核をなすプロジェクトだ」と持ち上げた。

　政府は既に同社に対し、3300億円もの巨額の補助金支出を決めている。設立から1年程度の新興企業に対する優遇ぶりは異常なほどだ。

　実際、ラピダスの設立には経産省が深く関わっている。米半導体大手、IBMが経産省に対し、同社が開発した回線幅2ナノメートル（ナノは10億分の1）の先端ロジック半導体の日本での製造を打診したのは2020年夏のことだった。

　パソコンや人工知能（AI）の頭脳の役割を果たす先端半導体は、回線の幅を狭くする「微細化」技術が性能を左右する。現在の最先端は、世界最大の半導体メーカーである台湾積体電路製造（TSMC）や、韓国サムスン電子が22年から量産を始めた3ナノメートル幅だ。

　これに対し、日本メーカーは40ナノメートル幅の汎用（はんよう）品しか作れない。日本企業は1980年代、半導体生産で世界シェアの50％超を独占していた。しかし、米国との貿易摩擦や投資判断の遅れから競争力を失い、現在は10％程度に低迷している。

　「国産半導体産業を復活させる最後のチャンスだ」。経産省はこう色めき立ち、半導体の製造装置を手がける東京エレクトロンで会長兼社長を務めた東哲郎氏とともに製造先探しを始めたが、国内企業に次々と断られた。窮した経産省と東氏が切った奥の手が、受け皿企業となるラピダスの設立だった。東氏は会長に就いた。27年にも2ナノメートル幅の量産を始める計画だ。

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