日本赤十字社です。みなさんがもっと献血してくれるには何をすべきか教えてください。

https://digital.asahi.com/articles/DA3S14836555.html

献血がつなぐ、息子の遺志　「元気になったら僕も」、母が継ぎ献血１４６回

　「元気になったらいつか僕も献血をしたい」。病床でそう言っていた１４歳の少年が、３年前に亡くなった。悪性リンパ腫と闘い、受けた輸血は約１２０人分に上る。その遺志をかなえ、恩返しをしようと、母は自ら献血を重ねた。息子が受けた数を超えてもなお、献血の輪を広げようと呼びかけている。

　神奈川県小田原市の北村賢司さんは、小学６年生だった２０１５年７月に悪性リンパ腫を発症。翌年６月まで入院した。

　小学校でソフトボールに打ち込んだ賢司さんは中学校に進学後、野球部に入部。通院治療を続けながら野球を続け、短いイニングながら試合にも出たり、中堅手として外野を駆け回ったりするほどに回復した。

　だが、退院から１年たった１７年６月、賢司さんは首のリンパ節に違和感を覚えた。「再発ということになる。厳しい状況になると思って欲しい」。医師は両親にそう告げた。母の千波さん（４８）は「頭が真っ白になった」と振り返る。

　■多量の輸血受け

　兄の太一さん（２０）から骨髄移植を受け、多量の輸血も受けて命をつないだ。賢司さんは病床で「元気になったら、いつか僕も献血をしたい」と話した。

　それでも病状は改善せず、同１２月、医師は千波さんに余命２カ月と告げた。「最後はやりたいことをやらせてあげたい」。両親は緩和治療の道を選んだ。

　１８年１月末、家族でヘリコプターに乗り、横浜市内や東京都内を遊覧飛行した。横浜市のみなとみらい２１地区を訪ね、大好きだったゲームアプリ「ポケモンＧＯ」で遊んだ。「やっぱり都会はポケモンが多いね」。賢司さんは興奮気味に言った。

　２月に入ると、全身に浮腫が出て、点滴が吸収されず体にたまった。５０キロだった体重は８５キロになった。

　３月１１日。賢司さんは次第に口数が少なくなり、息を引き取った。

　千波さんは賢司さんが亡くなった後、なにも手につかなかった。だがやがて、「賢司のためにも、今まで通り頑張ろう」と思うようになった。思い起こしたのは、賢司さんの命をつないだ血液のことだった。

　「献血があったからこそ、家族の時間を過ごすことが出来た。あの子の分も、今度は私たちが誰かを助ける番になりたい」

　夫の真司さん（５４）、兄の太一さんも同じ思いだった。時間が合えば、家族で献血に行くようになった。

　千波さんは高校時代から何度か献血に行ったことはあったといい、累計の献血回数は１４６回。すでに、賢司さんが提供を受けた数を超えた。

　■動画で呼びかけ

　コロナ禍で献血バスの派遣回数が減るなど、全国的に血液の確保が難しくなっているなか、千波さんは、神奈川県赤十字血液センターのメッセージ動画に出演し、献血への協力を呼びかけることにした。

　「献血をしてくれる人がいるので、賢司の思いは今も生き続けています」。千波さんがこう呼びかける動画は同センターのＹｏｕＴｕｂｅチャンネルで公開されている。

　「あなたを必要としている人がいるということを伝えたい。誰かの役に立ちたいという人の背中を押したい」と千波さんは言った。（岩本修弥）

　■献血バス配車、相次ぐ中止

　新型コロナウイルスは、献血にも影響している。１都９県で構成される関東甲信越ブロック血液センターによると、企業や大学などに出向く「献血バス」の配車中止が相次いでいる。

　関東甲信越地域では１月から２月中旬時点で計約３８０会場への配車が取りやめになった。特に緊急事態宣言が続く首都圏で中止になることが多い。４月以降、血液を安定供給できるかの見通しも立っていないという。とくに、リモートによる講義が続く大学や専門学校での再開が不透明という。

　昨年４～１２月には、関東甲信越地域で実施予定だった計約２３７０会場で中止になった。同地域では、毎日５千人分の血液を必要としており、担当者は「バスを見かけたら協力して欲しい」と呼びかけている。献血バスの配車状況はウェブサイト（https://www.bs.jrc.or.jp/ktks/bbc/2020/05/post-71.html別ウインドウで開きます）で見られる。