［社説］ウクライナ問題を埋没させず支援続けよ：日本経済新聞

それでもウクライナでは連日、戦闘が続き、死傷者が増え続けている。ロシアはいまもウクライナ領土の20%近くを占領したままだ。その現状を中東問題に埋没させてはならない。

ウクライナ軍が反転攻勢を開始して半年が経過した。一部の占領地を奪還したが、ゼレンスキー大統領は日本経済新聞などとのインタビューで「要塞が築かれている領土を奪還するのは非常に難しい」などと述べ、武器不足と苦戦を認めている。

気になるのは西側諸国の動きだ。最大の武器支援国である米国では議会が11月中旬につなぎ予算を可決したが、野党共和党の反対でウクライナ支援は除外された。

このままでは財政上の制約から武器供給の先細りは避けられない。バイデン政権は議会に支援を途切らせないよう協力を呼びかけているが、先行きは不透明だ。

欧州では大衆迎合のポピュリスト政党への支持が広がり、団結が揺らいでいる。9月と11月にそれぞれ実施されたスロバキアとオランダの総選挙ではいずれもウクライナへの軍事支援に後ろ向きな政党が第1党に躍進した。

欧州連合（EU）は2024年から4年で最大500億ユーロ（約8兆円）規模の支援を計画し、年内合意を目指している。しかし、ロシア寄りのオルバン首相率いるハンガリーとスロバキアなどが難色を示している。

ウクライナ支援の途絶は、同国を影響下に置こうとするロシアのプーチン大統領の勝利を意味するだけではない。法の支配という国際秩序が根底から崩れることも意味する。

第2、第3の侵略者の登場を許さないためにも、民主主義と自由を標榜する国の指導者や有権者はロシアに屈しない姿勢を貫かねばならない。

プーチン氏は12月1日、ロシア軍の最大兵員数を115万人から132万人に増やす大統領令に署名した。戦闘を続ける意志に変化はないようだ。

本格的な冬を迎え、電力など重要インフラ施設への空爆が増えることが懸念されている。武器の供与のみならず、人道的な支援も不可欠だ。日本が果たすべき役割も大きい。