在日ウクライナ「どこの国も助けに来てくれないんだね」

ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、福井県福井市に住むウクライナ人女性のイリーナ・クシニリェンコさん（37）が2月26日、福井新聞の取材に応じ、母国にいる家族の状況や胸中を語った。

父と妹家族が住むロシア国境付近の小さな町はロシア軍の戦車が駐留し、教会や小学校、孤児施設が砲撃を受けて炎上、死者も相次いでいるという。「ロシア軍に囲まれ、妹たちは逃げることもできず、地下施設に隠れている。誰も助けに来ない」と涙ながらに訴えた。

イリーナさんの父（62）と妹（33）らが住むのは、ウクライナ北東部のスムイ州周辺にあるコシブスチナ。人口2500人ほどで、ロシア国境から約60キロの位置にある。父、妹家族ともに無事で、国際電話で通話やメールができるという。

イリーナさんの妹によると、24日午前5時、町に突然、ロシア軍の戦車の列が地響きとともに侵攻してきた。妹とその夫、9歳の息子は夫の実家にある地下の野菜保管庫に身を潜めた。

極寒の中、食料も準備できず、保管庫内にある生のジャガイモやニンジン、キャベツを食べるしかなかった。1週間前までゲームをして怒られていた子どもは「お母さん、死にたくない」とおびえているという。

イリーナさんの母校の小学校や食品スーパーなども砲撃を受けて炎上。マンションにミサイルが着弾し、妹はあちこちに遺体がある中を逃げのびた家族の話も聞いたという。

イリーナさんや妹が投稿している会員制交流サイト（SNS）フェイスブックのグループ上には、夜に砲撃音とともにミサイルが飛来し、教会が炎上する動画などが投稿され、町の住民がパニックになっているコメントも並ぶ。

イリーナさんの父は別の家で安全を確保しているが、父の弟は民間人ながら武器を持って防衛に加わっている。

「他国は助けてくれない。女性や子どもたちを守るため、男たちで戦うしかない」とイリーナさん。町にロシア軍の戦車が駐留し、住民は身を隠すしかない状況だ。

「ロシア軍はいきなり進軍してきて、一般人が国外に逃げるチャンスなんて全くなかった。いったい私の祖国に何をしにきたのか。一般人を殺さないなんて、うそばかり」。悲痛な声で訴えた。

https://news.yahoo.co.jp/articles/cf708b0b0e281326ee7c503fef8f95b29525bfd8